PTSDとは、衝撃的な体験が心に大きな傷を残し、精神的障害を引き起こす病気です。


◎研究が始まったのはアメリカ◎

それまでも、欧米諸国では性的暴行や暴力を受けた女性のヒステリー症状をはじめ、心の傷の研究は行われてきました。が、PTSDの研究という意味で飛躍的に進歩したのは、ベトナム戦争の帰還兵に対するケアが始まりです。

戦争の生きるか死ぬかの残酷な体験や、戦友の死といった過酷な状況下で、突然、兵士がヒステリーと似た症状を現す…。戦争が終わってアメリカに帰って来ても、まるで人が違ったようになったり、戦闘を思い出して強いストレス障害に悩まされる…。

戦争被害者、その他の暴力の被害者の精神障害における研究が進み、PTSD(posttraumatic stress disorder)という病名がついたのは、1980年に入ってからのこと。DSM-III(「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第3版)に、初めてPTSD、心的外傷後ストレス障害という病名が登場したのです。


◎日本におけるPTSDの歴史◎

日本で、PTSDという病気が一般に知られるようになったのは、1995年の阪神・淡路大震災からです。それまでの普通の生活を奪われ、壊滅的に壊された街、多数の死傷者、長い避難所暮らし…。精神・心理の専門家の中には、その後遺症を危惧し、早い段階でボランティア活動をされていた方も多いと聞きます。また、兵庫県も「こころのケアセンター」を設置して対策に取り組みました。ちなみに、1996年の調査では「仮設住宅入居者の25%はPTSDの可能性」と指摘さています。

また、同じ年の地下鉄サリン事件でも、サリンによる肉体的な後遺症のほかに、“電車に乗れなくなる”といった精神的な後遺症が紹介され、PTSDという言葉がどんどん浸透してきました。

その後、自然災害や大きな事件が起こった時には、物資やライフラインの確保とともに、“心のケア”も最重要課題と認識されるようになっていきます。保健所の心理カウンセラーや医師が巡回訪問するだけでなく、電話での相談窓口を臨時に開設することもあります。ただ…。

アメリカでは大きな事故の場合は、政府の派遣チームの中には心理ケアの専門家が含まれているのに対し、日本ではあくまでも現場が要請を出し、それを受けて(他県などから)専門家が向かう、という形のようです。その要請が出されなければ、救いの手は差し伸べられないのです。もしくは、まったくのボランティアか…。なんというか、本当にお役所仕事だなぁと思うのですが…。

次ページで、より詳しくPTSDという病気の定義について、日本の治療の現状について書いていきます。



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